能福寺の十一面観音像
毎年1月18日に開扉
住所
神戸市兵庫区北逆瀬川町1-39
訪問日
2015年1月18日
拝観までの道
JR兵庫駅から東へ10分強、または神戸市営地下鉄海岸線の中央市場前駅から西へ徒歩約10分。お寺の入口は東側。
兵庫大仏として知られる露座の大仏のあるお寺である。
その大仏の台座下は永代供養のためのお堂(永代堂)となっていて、十一面観音像が本尊としてまつられている。秘仏というわけではないが、ご供養の場ということで一般の立ち入りはできず、初観音の1月18日に限って公開されている。
拝観料
拝観料等の設定は特になかった。
お寺や仏像のいわれなど
天台宗寺院。12世紀後半には平家の祈願寺となり栄えたという。近世に再興され、近代になって兵庫大仏がつくられて、奈良の大仏、鎌倉大仏とともに日本三大大仏に数えられた。
しかしこの大仏は戦中に金属供出によって失われてしまい、今の大仏は1991年に再建されたもの。高さ11メートルの金銅の露座の盧遮那仏である。
台座下にまつられる十一面観音像は、光背の銘文(ただし戦災で焼失)によればもと滋賀の善水寺に伝来し、江戸時代にこの近くの和田神社に移されて本地堂というお堂にまつられていたと知られる。その後、近代初期の廃仏の時期に能福寺に移安された。
拝観の環境
十一面観音像は永代堂中央、ガラスのケース状になった厨子中に安置され、横からもよく拝観できる。
事前に電話でうかがったところ、この1月18日は日中拝観可能ということだった。筆者は11時ごろに着くと、しばらくしてご法要がはじまった(12時すぎまで)。参列は10~20人と多くなく、ご住職のお話も心にしみいるようで、とてもありがたいご法要だった。
その後、ゆっくり拝観させていただけた。
仏像の印象
十一面観音像は像高約120センチの立像。一木造で、内ぐりもない古様なつくりだが、全体に穏やかな表現が目立ち、平安後期の作と思われる。しかし印象としては、どことなく天平古仏のような風格が感じられる。
顔つきは、目鼻を大きめにして、あごを小さくし、優美な表情を浮かべるが、横からの印象はまた違い、眉が上がって、引き締まった厳かさが感じられる。
冠の下に見える髪は、毛筋を刻まない。
体はスリムで、プロポーションよく、肩にかかる天衣は自然な感じである。ほぼ直立し、お腹を少し出す。条帛の筋や、下半身の衣、天衣は様式的に処理されている。
さらに知りたい時は…
『最澄と天台宗のすべて』(展覧会図録)、東京国立博物館ほか、2021年
『甲賀から移された文化財』、松岡長一郎、2013年、サンライズ出版
『神戸の文化財』、神戸市教育委員会ほか、神戸新聞社、1982年