無動寺の仏像
一木造の丈六大日如来像に圧倒される
訪問日
2013年7月13日
住所
神戸市北区山田町福地字新池100
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
神戸電鉄有馬線の箕谷(みのたに)駅下車。
駅前の坂を下ったところにあるバスロータリーから神戸市営バス111系統衝原(つくはら)行きに乗車。「福地」で下車し、北東へ約10分。バスの本数は1時間に1~2本。
バスを降りてからは案内表示が随所にあり、わかりやすい。上り坂に息が切れたころ、門前に到着する。なお、この道は「太陽と緑の道」といって、神戸市が設けた自然歩道の一部である。
拝観料
300円
お寺や仏像のいわれなど
真言宗の寺院。
草創は飛鳥時代という。しかし盛衰のうちに古記録は失われ、その沿革は明らかでない。
現本堂は江戸時代後期の再建。かつては末寺も多かったらしいが、近代初期の廃仏の時期に統合されて、現在に至っている。
拝観の環境
本堂の後ろに接続して収蔵庫(奥殿)がつくられ、ガラスで仕切られている。照明があるが、拝観位置からはやや距離がある。一眼鏡のようなものがあるといいと思う。
中には7躰の古仏が安置されている。奥中央は大日如来像。丈六の坐像で、その大きさに圧倒される。両脇に阿弥陀如来坐像と釈迦如来坐像。これらが三尊として古くよりこのお寺の本尊としてまつられてきたらしい。
前列には、阿弥陀如来坐像(来迎印)、不動明王坐像、十一面観音立像、地蔵菩薩立像がならぶ。
仏像の印象
大日如来像は全体に平面的な印象であるが、強い存在感がある。見開いた目、抑揚ゆたかな眉は素朴さの中に力強さを感じる。また、膝の左右への張り出しが非常に大きく、印象的である。これほどの巨像にもかかわらず、一木造でつくられている。像高は約270センチ。智拳印を結ぶ金剛界の大日如来像である。
脇の釈迦如来、阿弥陀如来の二尊は、素朴で親しみを感じる。像高はそれぞれ約120センチの坐像。中尊に向って左側にすわる釈迦如来像は一木造で、面長、大きな螺髪の粒、高い上半身。大日如来像とこの像は平安時代後期ごろの地方色のある仏像と考えられる。一方、阿弥陀如来像は定印を結ぶ。スギ材による寄木造で、釈迦像の像高や雰囲気に合わせて後世(室町時代ごろ)に補作された像と考えられる。釈迦如来像と比べると、顔つきや上半身はふくよかになっているのがわかる。
大日如来像の前にお前立ちのようにして安置されている不動明王像は像高約80センチの坐像で、割矧(わりは)ぎ造。安定感のある像で、堂内の仏像中もっとも洗練された造形を見せる。豊かな髪を束にしながら後ろへと流し、両目とも見開き、上の歯で下の唇を噛む。下半身の衣の流れは浅く、優美であるが、顔つきは憤怒像の迫力がしっかりと出ている。
十一面観音像は像高150センチほどの立像で、一木造。内ぐりもない古様な像である。顔は小さめで、下半身は長い。ほぼ直立だが、お腹がぷっくりと前に出ている。下肢中央に2つ、大きな渦巻きの文様が刻まれる。顔つきは、鼻・口が正中線から若干はずれ、目は細く、顎や小鼻は強い存在感を示して、なかなか力強い。
さらに知りたい時は…
『ふるさとのみほとけ 兵庫の仏像』、兵庫県立歴史博物館、1984年
『神戸の文化財』、神戸市教育委員会ほか、1982年