成相寺の薬師如来像

  平安時代前期の力強い表現

住所

南あわじ市八木馬回394

 

 

訪問日

2010年1月30日

 

 

 

拝観までの道

成相寺(なりあいじ)へは、淡路交通バス縦貫線(淡路島の一番北にある岩屋から南の福良までを走る長い路線バス)で「鳥井」下車、東南へ徒歩25〜30分。 ほぼ一本道で、アップダウンが少なく歩きやすい。

 

淡路交通

 

本州から淡路へは、山陽本線の舞子駅(神戸市で一番西にある駅)が高速バスへの乗り替え駅となっている。舞子駅の真上に「高速舞子」というバス停が設けられていて、ここで淡路、四国方面の高速バスに乗車すれば、明石海峡大橋を渡って淡路島に入る。

洲本IC(インターチェンジ)、洲本BS(高速バスセンター)、福良のいずれかで路線バスの縦貫線に乗り換えることができる。

高速バスは比較的本数が多く便利だが、縦貫線のバスは2時間に1本程度しかなくて、接続の便もよくはない。

 

淡路島には鉄道がないこともあって、タクシーが何社かあり、親切で便利である。

淡路交通のタクシー、あるいは島内の各社が加入しているタクシー組合の配車センターに事前に時間・場所を指定して電話でお願いすれば、待っていてくれる。

高速バス到着の時間を伝えて洲本ICのバス停にタクシーを呼んでおくと、そこからお寺まで20分くらいである。

 

成相寺は無住で、仏像は本堂横の収蔵庫内に安置され、保存会の方が管理している。拝観は事前申し込みが必要。問い合わせは南あわじ市教育委員会へ。

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺のいわれなど

今はがらんとした境内に数棟のお堂と収蔵庫があるだけだが、門は2つある。境内の入口には二天が守る門、そこから後ろ(西南)の方を振り返ると、250メートルほど向こうに仁王門が見える。

今でこそ無住のお寺だが、仁王門から本堂までの距離を考えると、相当に栄えた寺院であったのだろうと往時が偲ばれる。

 

寺伝によれば、鎌倉時代前期の1243年、高野山と根来寺の争乱に関連して淡路に流された高野山の実弘上人が、高野山に模して寺院を営んだのがこの寺のはじめという。しかし実弘来島をさかのぼる1223年の文書に成相寺の名前が見えるので、実際にはそれ以前からお寺は存在していたと考えられる。

 

 

拝観の環境

本尊はすぐ間近で、また横や背後からも拝観できる。脇侍(後世の作)は厨子に納まっていて、そのために本尊の側面観はやや見づらいものの、横顔は見ることができる。

収蔵庫内はライトはあるが、若干暗い。外からの明かりが入る晴天時がよい。

 

 

仏像の印象

像高は160センチ弱の立像。カヤの一木造。平安前期の力強い表現の仏像である。

螺髪(らほつ)は大粒で、肉髻は高く、目はつり上がる。目元、口もとに下地の漆が残って隈取りのようになり、それがさらに強い表情に見せる要因ともなっているが、それを差し引いても、かなり厳しい顔つきである。

胸、腹、ももは大きく前に張り出す。衣は特に上半身、極めてにぎやかに襞(ひだ)をあらわす。腕から下がる衣の襞(ひだ)など翻波式衣文で、背中側に刻まれた衣の線も深く力強い。

決して大きな像ではないが、全身から迫ってくる力に圧倒される。極めて魅力ある像と思う。

 

 

その他

門の二天像(持国天、多聞天像)と収蔵庫内安置の大日如来坐像は市指定の文化財。

 

 

さらに知りたい時は…

『名作誕生』(展覧会図録)、東京国立博物館ほか、2018年

『淡路島の仏教美術』(展覧会図録)、洲本市立淡路文化資料館、1992年

 

 

仏像探訪記/兵庫県