ふるさとミュージアム山城寄託の阿弥陀如来像
八幡市・宝寿院の仏像
住所
木津川市山城町上狛千両岩
訪問日
2010年10月17日
この仏像の姿(外部リンク)
館までの道
ふるさとミュージアム山城(山城郷土資料館)はJR奈良線上狛駅の東、徒歩20〜25分。
途中、要所に道しるべが設置され、わかりやすい。
休館日は原則月曜日。
入館料
常設展200円
仏像のいわれなど
「南山城の歴史と文化」と題する常設展の中で仏像、神像の展示がある。松尾神社の牛頭天皇像、廻照寺の毘沙門天像、そして宝寿院の阿弥陀如来像である。
このうち、宝寿院は八幡市にある浄土宗寺院。創建は20世紀になったからで、この像が伝来した経緯は不明という。最近銘文が見つかり、修理の後、ここに寄託された。
修復を経た現在も、さまざまな転変を経てきたことを感じさせる。手足などは後補。
展示の環境
ガラスケース中に展示され、間近からよく見ることができる。
仏像の印象
像高80センチ弱の立像で、ヒノキの寄木造、玉眼。
螺髪は大粒で、それぞれ渦を巻く。カーブする髪際はカーブし、中央で下がる。肉髻は低い。また、衣は胸のところで複雑に反転し、左肩では折れ曲がりを見せる。顔は丸顔で、目は細く、控えめな造作である。
衣文は腹のあたりでは弧を連ね、その下、脚部ではすっきりと縦のラインを強調している。なで肩、また下半身はかなりほっそりとした印象。体は比較的前傾姿勢である。
銘文により、鎌倉前期の1235年に、願主・僧行願、仏師・泉州別当定慶によってつくられた像とわかる。行願と泉州別当定慶については、どのような人物かはわからない。
鎌倉時代、定慶という仏師は複数存在したことが知られるが、この時期に活躍している肥後別当定慶とはあきらかに作風が異なる。
いずれにしても、名前から慶派に属す仏師と考えられ、運慶、快慶去りし後の慶派の造像の様相を知る貴重な作例といえる。
なお、この像は頭髪部を別材でつくってかぶせているそうで、これは大変珍しい。
その他
松尾神社の牛頭天王像は4つの顔の上に牛の頭をいただき、鎧をつけ、岩上に座る。右足は踏み下げる。像高は約50センチ。ヒノキの一木造。手足など後補もあるが、顔の表情が豊かで、堂々とした像である。斜め上から覗くと4つの顔を四方に向けた頭は大きく、その上に首から上の牛が乗っている姿はなかなか力がある。
廻照寺の毘沙門天像は小像で、動きの少なく、大人しい像。
さらに知りたい時は…
『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代 造像銘記篇 補遺及び第一期総目録』、中央公論美術出版、2010年
『南山城の歴史と文化』、京都府立山城郷土資料館、2002年