嵯峨の薬師寺の地蔵菩薩像
毎年8月24日に開扉
住所
京都市右京区嵯峨釈迦堂藤ノ木町46
訪問日
2015年8月24日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
薬師寺(嵯峨薬師寺)は、三国伝来の釈迦仏で有名な清凉寺と境内が続いている。
清凉寺本堂に向かって左側に豊臣秀頼首塚があり、その左手のお堂が薬師寺(嵯峨薬師寺)の本堂である。門はそのさらに左(西側)にあるが、清凉寺の仁王門をくぐって行くのがわかりやすい。
毎年8月24日に地蔵盆の日に公開。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれなど
もと真言宗のお寺だったが、近代以後浄土宗に転じた。本尊の薬師如来像は空海の自刻像と伝える。
薬師寺の近隣に福生寺(福正寺)というお寺があった。小野篁創建と伝える古刹であったが衰微を重ね、近代に至ってついに薬師寺に合併された。薬師寺本堂の本尊に向かって左の間に安置される地蔵菩薩像は、この福生寺の本尊だった仏像で、「生(しょう)六道地蔵菩薩」と呼ばれている。
福生寺を創建したという小野篁は平安時代前期の貴族・文人。冥界と行き来ができたと伝える。篁は東山の六道珍皇寺の井戸から冥界に出入りしたというが、現世に戻るときは別の枯れ井戸を用いたともいう。
あるとき篁は地獄の業火に焼かれる僧を見る。しかしそれは亡者にかわって苦しみを受けている地蔵菩薩の姿であった。そこで篁はその地蔵の姿を刻み、出口の井戸の場所に像を安置したといい、これが福生寺であるそうだ。
拝観の環境
堂内でよく拝観させていただけた。
仏像の印象
地蔵菩薩像は像高約80センチと、等身に近い大きさの像である。寄木造、玉眼。鎌倉時代の作。
左足を踏み下げ、右足は前にはずして座る。その自然な姿勢やプロポーションが魅力的で、端正で美しい像である。一方、顔つきをよく見ると、口もとを引き締めて、なかなかきびしい表情をしている。
上半身は大きく、下半身の衣はしっかりとていねいに刻まれる。
本堂のその他の仏像
本尊・薬師如来像の厨子に向かって右側に安置されている阿弥陀三尊像は、向かって左側の脇侍像が片膝をたてて船をこいでいるような姿勢をしている。船(像が実際に船に乗っているわけではないが)で来迎する阿弥陀様という面白い三尊像である。
もっとも三尊は本来一具でなく、脇侍の船をこいでいる姿の像は別の大きな仏像の光背化仏であったらしい。
中尊の阿弥陀如来坐像は胴がきりりとした表情と引き締まった胴、小気味よく整理された衣文が魅力的な鎌倉仏である。中尊の像高は約50センチ。
そのほかにも堂内には、裸形の聖徳太子像(下半身に衣を着せている)や伝嵯峨天皇像なども安置され、いずれも拝観できる。
さらに知りたい時は…
『京都発見』1、梅原猛、新潮社、1997年