弘源寺の毘沙門天像
春・秋の特別公開時に拝観できる
住所
京都市右京区嵯峨天竜寺芒ノ馬場町65
訪問日
2015年11月7日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
足利尊氏によって創建された臨済宗の大寺院、天竜寺は京福電鉄の終点嵐山駅の西側にある。
弘源寺(こうげんじ)はその塔頭のひとつで、天龍寺の拝観入口に向かう参道の中ほどより少し手前、右手(北側)にある。
このお寺は普段は非公開だが、春と秋にそれぞれ2ヶ月間ほどの特別拝観期間を設けている。お寺のホームページで確認のこと。なお、筆者が訪れた2015年秋の特別拝観期間は10月3日から12月6日までだった。
拝観料
500円
お寺や仏像のいわれなど
弘源寺は15世紀前半に室町幕府管領の細川氏によって開かれた。
本堂は江戸時代前期の建築。幕末に志士がつけた刀傷のある柱やこのお寺が所蔵する日本画を見せていただける。
本堂拝観後、順路に沿って進むと、毘沙門堂の前にでる。
本尊の毘沙門天像は平安時代前期までさかのぼると考えられる古像である。
寺伝によれば比叡山の無動寺に伝来した像がいつしか移されてきたという。
一方、足ほぞに江戸時代前期の修理銘があり、同文の銘が東福寺仏殿の四天王像のうちの持国天、増長天、広目天像(鎌倉時代)にもあることから、ある時期この3躰とともに一具をなしており、それが何らかの事情でこの1躰のみが離れたとの推定がなされている。
拝観の環境
拝観はお堂の扉口からで、照明はあるものの若干距離があり、一眼鏡のようなものがあるとよい。上からの垂れもののために、頭頂部(兜を着けている)や高くあげた右腕は見えないのは残念だった。
仏像の印象
像高はおよそ1メートル。ヒノキとみられる材の一木造である。
とにかく腰のひねりが大きい。思いきって右側(向かって左)に腰をもってきて、動きをつけ、腕や裳も大きな動作をみせる。
目は瞋目とせず、大きく見開き、口はへの字に強く結んでユーモラスである。
手足に着けた防具の金具がシンプルだが力強く、魅力的。
下半身は量感豊かにつくられ、それを覆う衣や鎧は重厚に、しかしさらにそれを上回る躍動感が重なって、たいへん面白い像である。
その他
天龍寺の大方丈の本尊は釈迦如来像。お寺の創建よりずっと古い平安後期の作で、像高90センチほどの割矧ぎ造。写真でみると頭部が大きめの可愛らしい雰囲気の像なのだが、残念ながら拝観順路からはほとんど見えない位置だった。
さらに知りたい時は…
『毘沙門天 北方鎮護のカミ』(展覧会図録)、奈良国立博物館ほか、2020年
『日本美術全集』4、小学館、2014年