2021年に開館したミュージアムより
1 廣澤美術館 (1月 開館)
廣澤美術館がある一帯は「ザ・ヒロサワ・シティ」とよばれ、茨城県を代表する企業グループ、広沢グループを率いる廣澤清氏が長年にわたって手がけてきた「健康」「自然」「文化」の3つの領域に関する事業が多角的に展開されている。「健康」はゴルフ場やオフロードコース、「自然」は農園や里山、「文化」はミュージアムや学校経営といった内容で、今回、「文化」面の中核として廣澤美術館のオープンとなった。
ゆったり広がる庭園の中に美術館が三角形の形、長細い3つの箱を組み合わせたシンプルな形状でつくられており、近代、現代の日本絵画、工芸を中心としたコレクションをテーマごとに展示している。それほどの広さはなく、2つの展示室の左右に長くのびるケース内の展示を見て、3つめの部屋に戻る。随所に設けられた広い窓から外の風景が取り込むようにつくられているのが魅力である。
展示を見たあと庭に出ると、建物の3辺のまわりの庭園はそれぞれ雰囲気が違い、それらをぐるりと一周できる。また、美術館のまわりには巨石が積まれており、これらの石は美術館の計画以前から集められ、この場所で保管されていたものという。巨石越しの美術館の屋根がとても軽やかで、好対照である。
美術館の中と外が響きあい、また実際に美術館の回遊と庭園の回遊が連続して、すぐれたデザインの美術館であると思う。
→ 廣澤美術館(外部リンク)
*下館駅からバス、原則月曜日休館
2 桑都日本遺産センター 八王子博物館(はちはく) (6月開館)
1967年開館の八王子市郷土資料館の展示場が3月末で閉館となり、入れ替わるように開館した八王子博物館だが、八王子市郷土資料館の後身ということでもないようだ。というのも、郷土資料館の展示以外の機能は残されており、将来、「歴史・郷土ミュージアム」の開館も予定されているということである。
では八王子博物館の内容であるが、展示を見ると、八王子の歴史や文化全般に関するガイダンス的機能といった側面が強いようだ。高尾山、八王子城、生糸生産といったテーマを切り口に、資料と説明文によって理解を深めてもらうことをめざしていて、企画展示や体験のコーナーもつくられている。
場所は八王子駅直結のビル内であり、年末年始と館内整理日を除く毎日19時まで開館とし、入館も無料と、敷居の低く設定している。
20ほどの小テーマが独立したケースによって配置されるが、このケースは積極的に木の素材を生かしてつくられており、親しみやすい絵を用いて興味を引くように工夫している。ケースごと番号がふられているのでそれが順路になっているようだが、一般の博物館のような壁面に沿って資料が並ぶ単純な動線に慣れている者にとっては、こうした配置は若干のとまどいも感じてしまう。
→ 八王子市ホームページ・八王子博物館(外部リンク)
*八王子駅からすぐ。館内整理のための休館日についてはホームページで確認のこと。
3 さいたま市立浦和博物館 (7月 リニューアル・オープン)
1878年につくられた旧埼玉師範学校の校舎の一部を復元した建物の中に設けられた、郷土史の博物館である。もと浦和市立郷土博物館といい、合併によって浦和市がさいたま市となったために、現在の名称となった。そういった経緯があるため、展示されているのは旧浦和市に関する歴史、民俗資料となっている。入館は無料。
2020年より約1年の休館期間を経て、リニューアルオープンし、外観をクリーニングしたほか、展示室中央のスペースをゆったりとしたものにした。展示品は決して多くなく、この地域の各時代を特にあらわすものを精選して展示しており、郷土博物館といえばごちゃごちゃと資料が詰込まれているところが多い中、すっきりとまとまった展示であるのが特色となっている。
→ さいたま市ホームページ・さいたま市立浦和博物館(外部リンク)
*北浦和駅などからバス。原則月曜日休館
4 丸紅ギャラリー (11月 開館)
竹橋の丸紅本社ビルの3階にオープンした美術館。
コレクションは江戸時代の服飾、近代の芸術家の手になる染織図案、日本の近代絵画、西洋の絵画である。ことに日本で唯一のボッティチェリ作品(「美しきシモネッタ」)を所蔵することで知られる。
なかなかユニークな美術館である。
常設展示はなく、年に2~3回、テーマを定め所蔵品による展覧会が開かれる。会期は2ヶ月ほど。つまり、開いていない日の方が多いくらいということになる(以上は当初の3回の展覧会(開館記念展)についてなので、今後はまた変わってくるかもしれない)。
入館料(およびポストカードなどのグッズ類)は、現金での取り扱いがなく、クレジットカードか交通系ICカードでの支払いとなる。入館料収入はすべて社会福祉法人丸紅基金(福祉団体への助成を主たる事業としている)への寄付となるのだそうだ。
入館すると、そこは長い廊下になっている。丸紅のあゆみとコレクションについて年代順に紹介するパネルを見ながら進むと、その先に改めて展覧会場の入場口がある。この距離によって、受付の人の声など、会場内に響いてくることはない。
展覧会場はそれほど広くないが、天井を高く取り、落ち着いた雰囲気の木の床で、また照明も申し分ない。展示室は、展示が引き立つよう展覧会ごと工夫し、空間の構成を変えているらしい。
とても贅沢につくられた美術館である。
同じフロアに入っているレストラン(おいしい)は、展覧会半券で割引になる。
→ 丸紅ギャラリー(外部リンク)
*竹橋駅から徒歩。日祝、年末年始、展示替え期間休み
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