2004年に開館したミュージアムより

東京国立博物館本館2階展示室
東京国立博物館本館2階展示室

 

1 ハウス オブ シセイドウ(4月開館)

 

 資生堂は1872年の創業以来「東京、銀座、資生堂」として親しまれてきたが、2003年、汐留に本社機能が移転。しかしあくまで資生堂は銀座にこだわるという意志をこめて、ミュージアムを並木通り沿い、銀座5丁目にオープンさせた。内容は企画展とアーカイブ(記録保管)。企画展は資生堂の歴史・文化に関するものばかりでなくさまざまなテーマで計画され、毎回楽しみである。

 アーカイブは資料のコーナーのほか、引き出してみることから映像がはじまる仕掛けとなっている「アーカイブ・テーブル」のコーナーがとても面白い。また、企画展ごとに作られる廉価なパンフレットもなかなかお洒落で魅力的。

 

*2011年、本社ビル建て替えにともなって、閉館となりました。

 

 

 

2 東京国立博物館本館(9月リニューアル・オープン)

 

 東京国立博物館は日本最大の美術博物館である。本館は文字通りその中心で、かつては1階・2階あわせて20余りの部屋すべてが、陶芸、彫刻、漆工、刀剣などといったジャンルごとに展示されていた。今回これを大きく改め、1階はテーマごとの展示を残す一方、2階を古代から近代までの日本の美術の通史展示とした。

 展示スタイルの変更にあたっては、どのような展示が見やすいのか内部でかなり細かく検討するとともに、アンケートなど外部の意見も熱意をもって聴取したようだ。結果、かなり見やすく、かつメリハリのきいた展示となった。同時に、絵画・書のように保存上の問題から長期間の展示が難しく頻繁に展示を替える必要があるものを中心に、展示替えの計画を事前によく練ることで、常に国宝などの名品と出会えるようになった。

 展示室ごとに壁付きのケース内の壁紙の色をかえるなどきめ細かい工夫もなされ、全体に評価できる。ただし、この美術にこの色の組み合わせでは…と感じる部屋もなくはない。また、1階の最後の展示室は博物館に美術作品を寄贈するなど大きな貢献をされた方を顕彰する場となったが、展示室まるまるひとつをこうした目的に使うのはどうかといった疑問も湧く。これらをどう感じるかは来館者によりまちまちと思う。今後も積極的に来館者の声を聞いて、さらによい展示を目指してほしいと思う。

 

→ 東京国立博物館のホームページ

 

*東京・上野、上野公園内

 

 

 

3 東京アートミュージアム(TAM)(10月開館)

 

 朝日新聞夕刊に「美の経済学」(横浜美術館館長の雪山行二氏が執筆)という連載がされていたのをご存じだろうか(2004年1〜6月)。2月5日の同欄では、美術館は単体として見る限り経営は常に赤字だが、地域経済を活性化させているという点も見てほしいという主張が述べられている。確かに、ミュージアムを来館者数や収支ばかりで評価するのでなく、地域社会の中で果している役割を計ろうとする目を持つことは重要なことである。

 この視点をさらに進めるならば、街づくりの一環としてミュージアムを考えるという方向性が見えてくる。欧米ではこうした考え方はかなり一般的だというが、日本の例では六本木ヒルズという新しい街づくりの一環として生まれた森美術館(2003年開館)をあげることができる。この森美術館の例に比べればはるかに小規模だが、このTAMもまた、街づくりの一環としてつくられた新しいミュージアムである。

 TAMがつくられたのは調布市の仙川という町である。日本の多くの地域と同様、ここでも再開発が計画され、都市計画道路が作られることになった。しかしこの町では住民と行政の話し合いのもと、安藤忠雄建築研究所との連携の中で、一体感のある、文化的な街づくりが進められ、その中で小さなミュージアムが設立されることになった。

 開館記念展は、この仙川の街を取りつづけた写真家田村彰英氏の作品展。小規模ではあるが、ユニークな窓の配置によって外を中に取り込むことに成功した素晴らしい空間と、時間と空間の変化を写すモノクロ写真が響き合う。

 

→ 東京アートミュージアムのホームページ

 

*京王線仙川駅下車5分。住所は調布市仙川町1-25-1。火曜日と水曜日は休館。上記の展覧会は2005年3月28日まで行われていた。

 

 

 

4 中近東文化センター附属博物館(1月閉室、11月再開室)

 

 中東の歴史・文化を展示する本格的な施設としては、このセンターは日本唯一のものであろう。この1月、主たる支援企業の業績の落ち込みのため展示室の閉室(研究機関は継続)に追い込まれたが、地元自治体と企業の支援を得て11月に再開室となった。

 景気の落ち込みとともに多くのミュージアムは冬の時代を迎えている。そうした中でこの中近東文化センターの再開室は本当に明るいニュースだった。

 

→ 中近東文化センターのホームページ 

 

*中央線武蔵境駅ほか、京王線調布駅などからバスが出ている。バス停西野下車3分。住所は三鷹市大沢3−10−31。月・木曜日は休み。土・日に行われる展示解説はとてもわかりやすい。

 

 

 

 

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